とび箱の先に見えるもの

2013年6月18日

先日、年長組が保育時間に跳び箱の練習をしていました。
この日私も久しぶりに子ども達の補助と指導に入りました。
今年の年長クラスは昨年の子ども達よりも跳び箱大~好き!!な子ども達が非常に多く
失敗しても何度も何度も挑戦するクラスです。
さて、この年長クラスにある男の子がいます。クラスでも本当に人気者です。
彼は非常に理解力が高く、様々な活動でもみんなを引っ張ってくれます。
しかし運動はあまり得意?ではないようです。
そんな彼が跳び箱に興味を持ち、挑戦していたのは昨年の事。
その間、同じクラスの子ども達でも跳び箱6段を跳べる子が次々と現れてきました。
彼の凄いところは跳ぶことが出来た本人よりも喜んで私に伝えに来るところです。
鉄棒が出来るようになった子がいればニコニコと私に1番に教えてくれます。
そのほかにも色々ありますが、彼は人の喜びを誰よりも早く感じ取り、
自分の事のように喜ぶことの出来る子です。だから彼の周りにはいつもトモダチが
集まってきます。

話を戻しますが、跳び箱には様々な複合した動作があります。
まずは勢いよく走ってくる「助走」、そして高く飛ぶためにロイター板を蹴る必要
があります。しかし全力で走ってきた足を上手く「ステップ」を踏み間合いを調整
することは簡単な事ではありません。そしてロイター板を強く「ける」力。
身体を下から上に引っ張り上げる「手」、箱に触れないように柔軟よく広げる「足」。
あとは83センチの壁を超えるために「勇気」が必要です。
言えばきりがないほどポイントがあります。

この日、4段と6段の跳び箱を出し2列で練習していました。
その男の子は4段に並び、上手に跳んでいます。
ある程度自信をつけた様子で、彼は6段の列に並びました。実は私にも彼がもう跳べる
ような気がしていました。身体の動作や脚力からしても既に6段を軽く跳ぶだけの力は
以前からついていました。なぜ跳べなかったのか?それは6段の跳び箱の前まで来ると
助走が遅くなってしまいます。そう、あとは「跳ぶための勇気」が必要でした。
彼の番となりました。いつもより素早い助走・・、スピードも落ちません。
「ドンッ!!」強くけられたロイター板からは大きな音がしました。
次に彼を見たときは跳び箱の向こう側、マットの上に立っていました。
彼は笑顔というよりも、口が開き驚いた顔をしていました。すると・・・・今まで
彼がしてきたように周りの友達が大きな声を上げて「〇〇くんが跳べた!!!」と
大喜びしています。その声で彼自身も実感し、笑顔がこぼれました♪

普段彼自身がしてきた事を、周りのトモダチ同じように接してくれた瞬間でした。
その瞬間、子ども達の成長を強く感じました。
自分以外の他者の事を、自分の事のように感じ取ることの出来る力を彼らは
身につけたようです。

彼にはとび箱の先にどんな光景がみえたのでしょうか?
一つ壁の向こう側へ進んでいく子ども達の背中が頼もしく見えた瞬間でした。

© 認定こども園 吉田南幼稚園

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